#40「それ考えるとやっぱもうちょっと上にいたかったなって」
〜T@Anonymity 琥珀堂店主かわうそ 主任@HAMA研〜

ホームマジックの話をしよう>#40「それ考えるとやっぱもうちょい上にいたかったなって」


(今回の記事を読まれる前に、まずコチラを御覧ください)
04年1月に行われたグランプリ岡山。健闘及ばず全員初日落ちとなってしまいましたが、その時の遠征組へインタビュー。
……って遅えよ! テープ自体はかなり早めに上がってきてたんですけど、えー、その、ごめんなさい(泣)。
僕等沖縄県民にとっては色々なものが遠い本土遠征。そこへ行くにあたって様々な準備をするわけですが、
GP岡山では何が足りてて何が足りなかったのか。技術? 情報? それとももっと別のもの?
それを訊く前に、まずはGP岡山を振り返ってみましょうか。当時はどういう情勢だったっけ?

けんつよ: 今回一生懸命デッキ構築してたし、メタデッキと当てたり、専用掲示板も立ててデッキの意見も交換してたりして。
そういうの見てたら「あ、今回は割と調整してるから行けるんちゃうん?」と思ってたわけ俺。
一人くらいは抜けるでしょみたいな。
いつもみたいに適当にそれぞれが各自好きなデッキで行く、みたいな感じではなかったし。
参加した人のうち三人は、ほとんど同じデッキ(ステロイド)(注1)で行ってるし。
だから「お、これは沖縄県勢のシークレットデッキとして名を馳せるのでは」とか、ちょっと浮かれてたんだけど、実際ふたを開けてみるとメタがだんだん緑系に寄ってきてて。
サイドに《非業の死/Perish》とか積まれてたじゃんね。
「ああ、やっぱりテストプレイしてたら(メタが)緑に寄ってくるんだなあ。ちょうどタイミングが悪かったなあ」。
かわうそ: なんか、メタったはずなのにメタられてた。
主任: それでもグランプリ一日目までは、まだ…。
トライアルからは流石に厳しかったけど。
一日目まではギリギリひっかかって使えるデッキだったんじゃないかと。
T: 初日までは結構いけてるっぽかったですよね。
主任: …細かい所が今になって気になるんだよね。
《火薬樽/Powder Keg》、もっと早く気づけ俺、とか。
《火薬樽》、当日のレジストの時にかき集めたんだけどね…アレ。
かわ: 俺も後で《火薬樽》入れたんだけど、めっさ強かった。
T: 《火薬樽》、デッキに合わないっていうことで、消してしまったのがマズかったなー。
……実際(《火薬樽》が)効くデッキが多かった。
主任: 一日目は、ほんとにねえ…持ってたら入れたんだけど。
無かったからしょうがないからそのまんま登録して。
ダサかったあれ。バインダーに入れて持っていけば良かった。たいして荷物になるわけでもないのにね。
つよ: 《火薬樽》は何に効くの?
主任: あのー、(サイドで)白ウィニー(注2)対策と称して《呪われた巻物/Cursed Scroll》の追加分とか取ってたんですけど、あの辺のクリーチャーって《火薬樽》でも全部飛ばせるんですよ。ほぼ同じターン数で。
あと、エンチャントレス(注3)相手にも(《火薬樽》のカウンターを)2個置いとけば突っ込めないから。
T: 《崇拝/Worship》避けになるのと、UG(注4)相手にトークン飛ばしたらそれだけで勝てることがあるのが。
主任: あれ、6/6トークン突破するのに《抵抗の誇示/Flash of Defiance》使おうってコトになった理由って、自分が《獣群の呼び声/Call of the Herd》使ってたからじゃん。
で、あれ、(自分たちのデッキから)《獣群の呼び声》抜くのをもうちょい早めに気付いていれば、《火薬樽》をあっさりサイドにとれたんだろうなって。
T: でもあの時点(出発前)ではTWO DEUCE(注5)を中心に見てたのもあって、《獣群の呼び声》強かったんだよなー。メタがずれてきてからは……。
主任: 実際(翌日行われた)トライアルの方は《獣群の呼び声》を全部《トロールの苦行者/Troll Ascetic》にしたら、そっちの方が異常に強かったじゃん。
かわ: あのデッキ、楽に勝てる相手には楽に勝ちすぎて、キツい相手に本当にキツかったりするからなー。だからそこらへんで何か考えて《火薬樽》っていう結論に達したんだけど、達したのが遅かった。
T: あれ一日早かったら大分違ってただろうなー。……でも、実際《火薬樽》とかってフタ開けてみたら白ウィニーの数が思ったよりいたのと、あとクレリック(注6)が出てきたからじゃないですか? あーでもなー。
かわ: クレリック、でも数はいなかったんじゃない。全部で、えー、何人? 4、5人くらい?
主任: いやでも実際さ、サイドの《呪われた巻物》がずっと疑問視されてたじゃない?
「白ウィニー用に追加するから」ってことになったからまあいいかって話になって…そのまま置いといたんだけど、メインに入れたからサイドにはもう要らんよなってのがずっとひっかかってたでしょ。
それなら《呪われた巻物》で対処できないモノに対処できるカードに変えとくべきだった。
T: でも上の方見てるとやっぱメタ通りだったから、この辺に居れれば結構勝てるんだろうなっていうのがあったんだけどなー。
つよ: やっぱByeが欲しいと。
T: 欲しかったですねー。
凄く思いましたね、今回それは。
主任: 最低2欲しい。贅沢なのはわかってるけど。
T: 上の方見たら(持ち込んだデッキでは分が悪い)ザ・ロック(注7)とかはほとんど駆逐されてて、2日目に残っていたのは1人か2人でしたよね。
それに当たって負けてるの考えると。
パタリバ(注8)も上には全然いなかったみたいだし。それ考えるとやっぱもうちょっと上にいたかったなって。
つよ: 上の方とは何とか戦える形にはなってた。
T: 大分勝てるっぽかった、ですよ。見てたら。結構、うん。
あ、でも一番上まで行くとリアニメイト(注9)とクレリックなんで相当厳しいですよね。
一番上よりちょっと手前の方がかなりメタ通りっぽかったなって。あの辺にいるべきだなって。
ステロイド自体がメタかなり絞ってて対応力の高いデッキじゃないから、まあしょうがなかったかなっていう。でもメタはそこまではズレてなかったから良かったなって。ネットだけであっちの情報仕入れてたから。
主任: でも賞味期限ギリギリだったねえ。
T: ギリギリでもまあ一応引っかかってたから、そこまであっちと違うわけじゃないんだっていうのは、ある程度、うん、良かったなっていうのは。
行って全然違う世界だったらかなりガックリくるから。
かわ: うん。メタはばっちり当たってたし、デッキもばっちり当たってたんだけど……まあ、多少運が無かったかなとは(笑)。しょうがない。

「メタゲーム」。簡単に言えば大会情勢予想ってことになるでしょうか。
グーが多いならパーを持ってく。パーが増えたらチョキを出す。
大会情勢を見通すことができれば、それだけ有利に立ち回れるようになるので、みんなメタゲームには必死です。
しかしそれを的中させても勝てると限らないのがマジック。むー、難しい。

注1)ステロイド
当時の沖縄勢が独自に調整していたのが所謂ステロイド系統の「LAND WALKER」。
独特なサイドボードやメインに投入された《猫族の戦士ミリー/Mirri, Cat Warrior》等、非常に興味深い調整がなされている。
詳しいレシピは前出の通り。

注2)白ウィニー
白の低コスト高性能クリーチャー陣での速攻を基本としたデッキ。
当時の白ウィニーといえばレベルエンジンや《呪われた巻物/Cursed Scroll》に加えタッチ青で《翻弄する魔道士/Meddling Mage》等を加えたタイプが主であった。
残念ながらグランプリ岡山においては結果を残していない。

注3)エンチャントレス
《アルゴスの女魔術師/Argothian Enchantress》、《女魔術師の存在/Enchantress's Presence》環境下の《繁茂/Wild Growth》、《肥沃な大地/Fertile Ground》等をドローエンジンとして最終的に《気流の言葉/Words of Wind》によるセミロック、または無限マナによって勝利するコンボデッキ。

注4)UG
オデッセイブロックの《野生の雑種犬/Wild Mongrel》、《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla》、《尊大なワーム/Arrogant Wurm》、《ワームの咆哮/Roar of the Wurm》、《不可思議/Wonder》といった優秀カードを中心にマッドネス、フラッシュバックをデッキの中核にしたアーキタイプ。
マッドネスタイプ、《物静かな思索/Quiet Speculation》タイプ等、色々な形があるがそれらを一括してUGと呼ばれているようだ。

注5)TWO DEUCE
赤の火力と緑の優秀クリーチャーという点ではステロイドに分類されるかもしれないが、動き自体はスライに近い。赤緑のスライといったほうが判り易い。マナカーヴが低めに抑えられ、ステロイドに比べ短期決戦型である。緑を加える理由としては《怨恨/Rancor》、《野生の雑種犬/Wild Mongrel》等があまりに高性能過ぎるからという点とスライに比べ、受けが広くなるからであろう。

注6)クレリック
グランプリ岡山の台風の目となったコンボデッキ。
以前からローグデッキとして存在していた《コー/Kor》族+《特別工作班/Task Force》+《価値ある理由/Worthy Cause》による所謂無限ライフコンボに《ダールの降霊者/Daru Spiritualist》、《生ける願い/Living Wish》等を加え、安定感ある動きをするようになった。
また勝ち手段の一つが《アカデミーの学長/Academy Rector》からの《忍耐の試練/Test of Endurance》という点も踏まえて、一見ファンデッキだからと馬鹿にはできないこともあることを証明した。

注7)ロック
エクステンデッドでは定番ともいえる黒緑のボードコントロールデッキ。
《花の壁/Wall of Blossoms》、《ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder》等のアドヴァンテージクリーチャーで序盤を凌ぎつつ、《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》や《魂売り/Spiritmonger》に繋げて勝つ。
基本的にクリーチャーデッキには滅法強いがリアニメイトやアルーレンのようなコンボデッキには脆弱な面がある。

注8)パタリバ
《再誕のパターン/Pattern of Rebirth》を中核とした《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk》+《共生のワーム/Symbiotic Wurm》または《はじける子嚢/Saproling Burst》によるコンボデッキ。

注9)リアニメイト
当時のリアニメイトは黒青赤《縫合グール/Sutured Ghoul》と《クローサの雲掻き獣/Krosan Cloudscraper》×2による瞬殺型と黒青の《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》型があった。
いずれのタイプも高速召還されたファッティによる攻撃での勝利を目的としている。
この時点でのニュースとしては《縫合グール/Sutured Ghoul》型に投入された《投げ飛ばし/Fling》と《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》に投入された《朽ちゆくインプ/Putrid Imp》等であろうか。

(解説:けんつよ)

続く

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