フ○ンケルブラック

トップクラスのデッキをいくつも持ち歩くのは、実は、想像するほど簡単ではない。「土地破壊デッキに入る土地の数は23枚では手札にこないが24枚では引きすぎる」とか「緑対策として除去の枚数を増やすのと青対策として手札破壊にはしるのとではどちらが得策か」といった難問が待ち構えているからだ。だが、ありがたいことに、このデッキで直面する問題はまるで次元が違う。「膀胱が破裂寸前でトイレに行きたいんだが、デッキが盗まれたら大変だ」とか「このデッキを組むためにもう三日も何も食ってないよ」という類の、強さは保証済みだが経済的に問題あり、というものばかりだからだ。こうした問題の解決方法は簡単だ。馬鹿高いレアを使うのをやめて一枚十円のコモンを使うこと、もしくは誰も見向きもしない第6版のカードを使うことだ。

所長:今回のデッキもまた強いことは強いが金に物を言わせて作ったようなデッキだな。まったく狂気の沙汰としかいいようがない。このデッキのコンセプトはこうだ。つまり、≪ファイレクシアの抹殺者≫や≪走り回るスカージ≫といった低コストだがパワーのあるクリーチャーをすばやく場に並べ、相手をビートダウンする。そして相手がそれに対処する前に≪吸血の教示者≫で相手の手を止めるのに最適な一枚を引っ張ってくる。それでも足りなければ≪ヨーグモスの意思≫でもう一度使いまわす。

主任:そうして対戦相手がメインから入った≪非業の死≫や≪ストロームガルドの陰謀団≫に悪態をつく間に、もうビートダウンは成功しているってわけだ。ふむ、確かに我らがフ○ンケル君はなかなか着眼点は良かったようだ。しかし、ただひとつ残念なことに、多くのトッププレイヤーたちがしばしばそうであるように、彼もまたデッキの値段という点で激しく選択を誤っているといわざるを得ない。

所長:そこで、デッキに入っているカードを役割別に分解し、よりふさわしく手に入りやすい別のカードに置き換えることにしよう。まず、マナブーストに入っている≪暗黒の儀式≫は問題なく4枚の≪ラノワーエルフ≫に置き換わる。この緑最高級のコモンクリーチャーは、序盤の充分なマナ加速と後半の打撃力として役立ってくれるからだ。そして主な打撃要員としてはいっている≪ファイレクシアの抹殺者≫や≪走り回るスカージ≫といった低コストのデカ物どもも、まとめて≪ブラストダーム≫や≪灰色熊≫といったコストやパワー/タフネスがそっくりなクリーチャーに置き換える。

主任:さて、問題の≪教示者≫のことだが、我らがフ○ンケル君は、どうやら今までまともな教師に出会ったことがなかったらしい。カードを引っ張ってくるのにいちいち黒マナとライフを2点も要求するなんて、そんな奴は元軍人かゲイのどちらかだ。幸い我々にはより無害な≪俗世の教示者≫がいた。こいつはとってもいい奴さ。ライフも減らさずにすむし、何より安い。

所長:ただしこれで引っ張ることのできるカードに制限がついたことは確かだ。しかし、このデッキのコンセプトは何度も言うようにビートダウンだ。引くカードがクリーチャーに絞られても大きな問題はない。作業を続けよう。≪虐殺≫≪非業の死≫≪ストロームガルドの陰謀団≫といった各色対策のカードは、≪闇番のエルフ≫≪ふくれたヒキガエル≫≪ティタニアの選ばれしもの≫に置き換わる。さらに単色対策と思われる≪迫害≫も同じく、≪狩りの統率者≫に置き換わる。これらのカードは≪非業の死≫や≪迫害≫などと違って≪俗世の教示者≫で引っ張ってこれるからだ。しかもうっかり場に合わないカードを引いてしまった場合、元のデッキのでは≪暴露≫の代用コストぐらいにしか使い道がないが、このデッキでは≪エルフ≫と≪ヒキガエル≫はサイクリングがついているし、≪選ばれしもの≫は最低でも自分が緑を使っているので問題ない。≪狩りの統率者≫はもちろん相手の多くコントロールしているクリーチャータイプを言うのが理想だが、そうでなくてもこのデッキには5体ものエルフが入っているので、とりあえず3/3ぐらいの大きさは保証されている。

主任:墓地活用の≪ヨーグモスの意思≫もまるで問題なく≪エルフの隠し場所≫に置き換わる。こちらは一枚しか墓地から戻ってこないが、もともと欲しいカードなんて墓地にそう多くは落ちていないはずだ。狙いをすました一枚をゲットしてくれ。ちなみに≪エルフの隠し場所≫で墓地にあるもう一枚の≪エルフの隠し場所≫を拾う、ということを延々くり返して馬鹿デカイ≪ティタニアの選ばれしもの≫を作り出すなんてコンボもあるわけだが。

所長:除去のほうについてはどうだろう。まったく、こちらは緑だというのに≪のたうつウンパス≫やら≪不純な飢え≫だって?フ○ンケルの野郎、一体我々にどうしろっていうんだ!?

主任:まぁ、落ち着け。≪ウンパス≫は代わりに≪突風売り≫でいい。3/3でサイズも一緒だし、相手に直接ダメージを飛ばせる点も同じだしな。≪飢え≫については≪落とし穴≫で解決できた。こいつはアンコモンだが、サイズに関係なく除去できるし、プロテクションに頭を悩ます心配がない。≪撲滅≫はおそらく世に氾濫する≪マスティコア≫対策であろうから、≪木っ端みじん≫でもいいわけだ。

所長:相手の手をとめるカードとして有効な≪呆然≫は同じく3マナの≪休耕地≫で、≪仕組まれた疫病≫は効果の似ている≪茨に茂み≫で問題ないな。残りのスペルは「相手の手を1ターン止めるのと自分が1ターン加速するのは同じ」という相対性理論に基づき、≪怨恨≫と≪激励≫にすることにしよう。

主任:そうなると最後は土地だが、なるほど、さすがにフ○ンケル君もここまで高いカードばかりを使ってきた自分の過ちに気付いてしまったらしい。基本地形である≪沼≫が15枚も入っている。それは大変すばらしいことだ。賢いデュエリストは用もないのに≪真鍮の都≫なんか入れないものだ。しかしただひとつ残念なことがある。それは≪沼≫からは黒いマナしか出ないということだ。もはやこのデッキには黒のカードは入っていないので、入れるべき基本地形は≪森≫が正解だ。

所長:あとは≪リシャーダの港≫だが、こいつはホントよく見かけるよな?たいていのデッキには入ってる。あるデータによると、大会中、≪森≫≪島≫についで3番目に使用枚数の多い土地なんだとよ、こいつは。≪山≫なんか≪黄塵地帯≫よりレアなカードらしいぜ!?

主任:ここは我らが≪冬月大地≫の出番だな。これで浮いた金で毎デュエルにペプシとピザをつけることが可能ってわけだ。十枚は食えるな。ワオ、胃もたれしちまうよ!

所長:なに、トータルで5万も浮いたんだ。腕のいい医者でも探すさ。

主任:なるほどね。

=次回予告=
 無事シアトルにたどり着いたHAMA研の一行であるが、そこは超古代の遺産・オーパーツ(場違いな加工品、という意味)の眠る場所だった。すでに先進各国は特殊部隊を派遣し、古代の超兵器≪Black Lotus≫の争奪に乗り出していた。超古代文明の遺産を悪しき者から守る特殊工作員・スプリガン。芸大生でありながら世界最強と恐れられているM.Aもまた、<スプリガン>として非情なる戦いに生きる一人である。‘エイトグ第6版からスタンダード落ち’その秘密を探るためW..C社へ潜入したHAMA研だったが、そこには、チーム・デッドガイの危険な罠が…!?


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