こんなデッキは札束だ!第弐回
まあ、そんなにカッカするなよ
へっぽこプレイヤーがトッププレイヤーのデッキを改悪するというコンセプトからしてすでに破綻しつつあるこの企画、前回が予想外に好評だったため図にのってコーナーとして独立、第弐回を迎えることとあいなった。もちろんコーナー名は例のヤツのパクリである。 ここで誤解を招かないために明確にしておきたいのだが、この企画には元のデッキを非難する意図は1ミリグラムもない。 どのデッキも各大会において実績を上げた珠玉の逸品である。それに地方のへっぽこプレイヤーが性能面でけちをつけるなどアース様につっかかるマグマ大使のごとき愚行であると言わざるをえまい。しかし素人でも一つだけは突っ込める部分がある。それが値段であり、強いデッキの主要部分を安いへっぽこカードに置き換え、デッキがみるみる弱くなる様を笑ってもらうのが当コーナーの真意であるからして、本気での突っ込みや、このデッキは弱いといった苦情その他のご意見は聞く耳をもたないことをここにお断りしておきたい。 さて、今回の題材はAPAC優勝者の森雅也氏が選択したこともあり一気に知名度の上がった「アングリーハーミット」である。しかし、ここでは森氏の使用したヴァージョンではなく、US Nationalsスタンダード部門上位入賞をはたしたAARON FORSYTHE氏の使用したヴァージョンをもとに話を進めたい。 所長:このデッキは強さにおいてはケチのつけようがない。そして赤緑というステロイド全盛期を最後にトーナメントシーンでは化石となってしまった組み合わせはわたしに再び自分のカード評価を信じてオリジナルのデッキを制作したいという意欲を与えてくれた。 しかし残念なことに問題がひとつある。このデッキを組むにはあまりにも金がかかりすぎるのだ。 主任:残念なことに、このデッキのデザイナー達は巷のカジュアルプレイヤーはそれほど金もカードも持ってないということを失念してしまったらしい。 具体的な金額の明細は別途のリストを見てもらうとして総額はなんと¥65440にもなってしまう。はっきりいってこのデッキは高価すぎる。 ちなみにわたしの食費は一月に¥60000もかからない。 われわれが仕立て直すデッキでは、当然もっと安いカードを使うべきだろう。 所長とわたしが最初に頭を悩ませたのは、このデッキのテーマである四枚のハーミットだ。 たったの四枚で¥6800というのは、はげしく選択を誤っているというほかはない。 所長:主任の意見はもっともだ。そこでわれわれはハーミットのスロットをクラッシックの優秀なトークン生産カードである「草陰の待ち伏せ」と交換することにした。 これはたったの3マナでプレイできるし起きている森の数だけのトークンが出る。あなたが場に並べた森の数だけのネコの大群でテーブルの上を埋めつくすことができるのだ。 ということはただマナブーストするよりもライブラリから効果的に森をサーチできるカードの方がのぞましい。 《ヤヴィマヤの古老》はこの要求にうってつけのカードだ。 しかし四枚の《極楽鳥》はベストの選択とはいいがたい。ここはすばやく森を場に並べられる《ヤヴィマヤの農夫》にがんばってもらうことにしよう。 主任:所長の選択は非常に納得のいくものだ。 このデッキはサイドボードを含めても3色目は入っていない完全な赤緑デッキだ。ということは《極楽鳥》を使うメリットは1ターン目にマナクリーチャーが出せるというだけで赤マナが出せるという点はさして重要ではないということだ。ここは赤マナは最も信頼できる地形の一つである《山》から出してもらうことにしよう。5枚目の《ラノワールのエルフ》と《山》のかわりをさせるために1枚¥2300もするカードを使うなんて喉が渇いてしょうがない時に(贅沢ミルク紅茶Ti-Ha)を買うのと同じくらいバカバカしい事だ。賢明なプレイヤーは持田香のポスターの魔力に惹かれた時以外はこんな事はしないものだ。そしてこの選択はいくつかの新しい戦略をデッキに盛りこむことを可能にしてくれている。 元のデッキでは《なだれ乗り》によって相手の手の伸びを邪魔する戦略をとっているが《なだれ乗り》では一枚しか土地が壊せないため《すき込み》などをひき続けることができなければやがて対戦相手は場に自分のコントロールを確立してしまうだろう。さらにかけつけ一杯の生中のジョッキを空けるくらいして見せるかもしれない。これが《ケルドの焼き討ち兵》なら自分の土地が続く限り土地破壊を行うことで対戦相手を永遠に序盤に閉じ込めておくことができる。 それに《古老》や《農夫》とのシナジィもすばらしい。 ¥400もする《なだれ乗り》に頼るのはやめて、¥50の《ケルドの焼き討ち兵》に切り替えて浮いた金で生中の1杯でも対戦相手におごってやるのが賢明というものだ。 所長:このデッキのクリーチャーでわれわれが一番おどろかされたのは《マスティコア》がなんと3枚も入っているのだ。このデッキのデザイナー達はこのデッキを巷のプレイヤーがコピーしてショップのトーナメントに持ち込むことが我慢できなかったらしい。 わたしの知る限り《マスティコア》を3枚も4枚も持っているようなヤツは軍人かさもなければ悪どいトレードを小学生にもちかけるシャークのどちらかだ。善良な一般プレイヤーであろうはずがない。庶民の味方を自負するわれわれとしてはこんな一部の人間の横暴を見過ごすことはできない。ここは優秀な砲台兼手札を食うところも《マスティコア》に クリソツな《弧炎の魔道士》に断固さしかえるべきだ。まあ最後まで話を聞いてくれ。 《魔道士》じゃ(プロテクション赤)が殺れないっていうんだろう?そんな心配症な肝っ玉の小さいプレイヤーのために無色のダメ−ジソースも用意している。《髑髏カタパルト》がそうだ。《マスティコア》と同じ4マナの上たった1マナでプレイヤーにまで2点飛ばせるなんて頼もしいだろう。これなら起動のたびにクリーチャーをサクらなきゃならないなんて安いもんだ。 主任:クリーチャーはこのくらいにして次は呪文の選択をみていこう。《弧状の稲妻》はコモンので問題無く4枚入るが、《すき込み》が4枚も入っているのは大問題だ。できればスッパリぬいて《石の雨》でも入れたいところだがここは元のコンセプトを尊重することにして《休耕地》を採用しよう。こいつは土地を1枚しかライブラリに戻せないが、それなりにドローをとめてくれるしなにより¥50ですむ。まあ、戻しきれないもう一枚の土地は《焼き討ち兵》でなんとかしてくれ。 所長:元のデッキはスペルはこれだけなのだがわれわれはここに《俗世の教示者》を追加している。いうまでもなくこれは《スカイシュラウドの密猟者》の代わりだ。無論、われわれも《密猟者》の利点がサーチ能力だけでなく、直接場に出せる能力が売りなことは知っている。しかし一枚¥500の差はあまりにも大きい。ここは涙を飲んで《密猟者》にはご退場願おう。 主任:さあお待ちかね、最後は恐怖の土地の見直しだ。このデッキの土地の配分はマナの供給の面から見ればなんの問題もない。しかし、金銭面から見るとこれは狂気の沙汰というほかはない。なにしろ基本地形よりも特殊地形の方が、それもよりによってレアの土地が一番多いのだ。このデッキのデザイナーは何を思ってこんなに土地を買い集めたのか? わたしの思うに彼はマジックをやめたあかつきには買い占めた一等地に豪華マンションを立てて不動産王として生計をたてるつもりだったに違いない。まあバブルがはじけた今の日本ではとうてい無理な話だが。 所長:彼が土地成金を目指したかどうかはさておき、われわれはこんなひどいカード自慢大会のような土地構成を見過ごすわけにはいかない。《草陰の待ち伏せ》との相性も踏まえて《森》を増やすのはもちろんだが、《カープルーザンの森》などの赤マナの発生源もレアである以上切り捨てたために、相応の数の《山》を増やさなければならない。しかし 《古老》にくわえて《農夫》も投入したこのデッキではそう大量に増やさなくても安定して必要な数の土地を手に入れることができるはずだ。《樹上の村》に関しては優秀な打撃力と緑マナを兼ね備え、値段も手ごろなのでそのままにすることにした。 まとめとしては赤マナは《山》から出せ、レアからは出すな、そういうことだ。 主任:所長の言い方はちょっと厳しすぎたかもしれない。だが、コモンでもできることはコモンでやったほうが金がかからなくてすむという見切りはまったくそのとおりだ。 しかしわたしは《極楽鳥》をカットしてしまったためにこのデッキの赤マナ基盤には若干の不安を感じる。そしてこのデッキに関しては土地の拘束が戦略の一環になっているので 使い切りの《冬月台地》では《リシャーダの港》の代用としては力不足だ。そこでわたしはこのスロットに《リスティックの洞窟》を加えることにした。これは五色出せるランドの中で一番値段が安いしある程度の土地拘束力をそなえているのでこのデッキにはもってこいのカードだ。 所長:修正後のわれわれのデッキはどうだろう? ¥65440かかるところを¥3370ですませてしまった以上、もとほどの強さは望めそうもないが悪くない線に落ち着いたと思う。 高いカードを洗い出し、それを値段の安い、そこそこ似ているカードと入れかえてデッキ全体の値段を引き下げる、われわれの手にかかればこんな作業朝飯前だ。 主任:最後にもう一度繰り返すが、われわれは元のデッキを中傷する気は1ミクロンもない。このデッキのデザイナーがもし気を悪くされるようなことがないように御本人の了解を取ってから話を進めたいのが本音なのだが、自分でネットに接続できない環境にあるわれわれにはできない相談だ。もしデザイナーの皆さんの気に障るようなことがないようにここで先に謝らせておいて頂きたい。じゃあ、また次回。 【次回予告】 20世紀末…現代の日本。HAMA研所長のH・Aは『幽波紋(スタンド)』と呼ばれる超能力を持っていた。その悪影響でダメになりつつあるスタンダードシーンを救うため、そして、その元凶マローを倒すため、H.・AはM・A以下それぞれの『幽波紋(スタンド)』を持つ仲間とともにシアトルへと旅立つ。 しかしその飛行機の機内で一行は「塔」の暗示の『幽波紋(スタンド)』に襲撃されるが!? |
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