去りゆく老兵達(オデッセイブロック編)第8回 デッキタイプ

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今年もまたスタンダードの入れ替わりの季節がやってまいりました。
今回脱落するのはオデッセイブロック。
フラッシュバックやマッドネスといった簡単にアドバンテージを生み出すシステムを数多く提供した強力なブロックだっただけに環境に及ぼす影響は大きそうです。
そこでまずは環境落ちで影響の大きそうなカードを色別にピックアップし、それから各デッキタイプごとの影響を考えるという形で話を進めてみたいと思います。

各色ごとのチェックは終ったので、これらを踏まえた上で現環境で有力なデッキタイプに及ぼす影響を考えてみたいかと。
色ごとに有力なデッキタイプってヤツをちょっと前の流行りまで踏まえて整理してみると


ウェイク
サイクリング
青白パーミッション

サイカトグ
各種UG

黒単コントロール
ブレイズ
リアニメート

ゴブリン
罠橋バーン
赤白土地破壊

ステロイド
GWビートダウン

こんな感じで。
とりあえずメインで強い色で分けてみました。
単色のデッキが少なかっただけに幾つか色が被ってますがそこはご了承ください。

で、上から順に見ていくとまずはウェイク。
ウェイクの失うものといえば《ミラーリ/Mirari》、《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》、《クローサの境界/Krosan Verge》、《強制/Compulsion》、《綿密な分析/Deep Analysis》、《堂々巡り/Circular Logic》、青と赤の2つの《願い》などなど。
というか何も残りませんね。壊滅
残るものは《賛美されし天使/Exalted Angel》と《正義の命令/Decree of Justice》くらいでしょうか。
これらを駆使して元のコンセプトを引き継いでデッキを構築しようとするならば、新たなマナ増強カードの《超次元レンズ/Extraplanar Lens》や《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》、あるいは8版のウルザ3地形などを駆使してマナを確保する白単色のコントロールデッキという事になりそうです。

サイクリングに関してはほぼそのままかと。
もともとがオンスロートブロックに依存するデッキです。
なくなるものと言えば《地図作り/Cartographer》と《ティーロの信者/Teroh's Faithful》くらいのモノ。
土地の循環ができなくなるので緑をタッチする意味が減るくらいでしょうか。
これもスカージで《永遠のドラゴン/Eternal Dragon》が入ったので無くても別に困らないギミック。
《ティーロの信者/Teroh's Faithful》もまあ、ライフゲイン手段は他にいろいろあるので。
むしろ《映し身人形/Duplicant》、《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》、《トリスケリオン/Triskelion》等、消して出して嬉しい生物は増えてるのでむしろ選択肢の多さに困りそうです。

青白パーミッションからは《綿密な分析/Deep Analysis》、《行き詰まり/Standstill》、《強制/Compulsion》といったドロー強化、ほぼ確定カウンター《堂々巡り/Circular Logic》、《ねじれの光/Ray of Distortion》に《狡猾な願い/Cunning Wish》などが脱落。
8版以降カウンターの弱体化が進む上に純粋に手札を増やす手段もどんどん重くなっていきます。
《知識の渇望/Thirst for Knowledge》あたりが後釜として期待できますが、手札を増やすためには何らかのアーティファクトをデッキに投入する必要が。
エンドカードにあるアーティファクトをディスカードしてしまうには抵抗があるのでアーティファクト土地あたりが候補ですが、そうなると今後必要になりそうな《アクローマの復讐/Akroma's Vengeance》が撃ちにくくなるという欠点も。
痛し痒し、重ね重ね辛いところです。

次にサイカトグ。
コレはもう看板クリーチャーにしてデッキタイトルの《サイカトグ/Psychatog》を失うので存在できるはずもなく。
カウンター&ドロー強化の弱体化、《強迫/Duress》、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》など軽量の妨害手段の欠如ですでに虫の息のサイカはこれで完全に消えることになります。
コンセプトを引き継ごうにも、代わりのフィニッシャー《ゾンビの横行/Zombie Infestation》にもう一つの看板《激動/Upheaval》も無くなるので似たデッキすら組めそうもありません。
こっそり《消えないこだま/Haunting Echoes》が消えるのも痛いところ。

UGはフラッシュバック、マッドネス、スレッショルドの全てが壊滅。
どのメカニズムもオデッセイブロック固有のモノなので当然といえば当然。
これに関してはもはや救済の余地はありません。
青緑という色の組み合わせでデッキが組めなくなるということではありませんが、いわゆるUGというタイプとは似ても似つかぬものになることは間違いないでしょう。

黒単コントロールは置き換わるカードこそいろいろ夢が見れそうですが全体にパワーダウンは必至。
特に軽量域の手札破壊、除去の欠如が厳しいです。
装備品のご利益でウィニーデッキが高速化するなか序盤を生き延びるためのスペルの欠如は逆風です。
デッキを手札破壊と除去のカタマリにして困ったら《忘却石/Oblivion Stone》という形で成立できないことも無いでしょうが、そうなると高速で動くことは不可能。
ピンポイントで手札を落とす手段も無いので《因果応報/Karma》にガッチリハマることになりそうです。
白ウィニーにしろサイクリングにしろ白を採用するデッキが増えるようなら遭遇率も上がろうというもの。
割るなり書き換えるなり何らかの対策は必要になるでしょう。
場合によってはコントロールとはいえクリーチャー主体の形に寄せてある程度のスピードで勝てるようにする方が無難かも知れません。

ブレイズは《陰謀団の先手ブレイズ/Braids, Cabal Minion》が無くなるのでどうしょうも無く。
《煙突/Smokestack》のようなパーマネントロック手段が無くなってしまうので、もう似たデッキも存在できません。
一応《選別の秤/Culling Scales》なんてモノもアリはするんですが機能的には全く別物なので代役には程遠く。
次なる《煙突/Smokestack》が出てくるまで待たなくてはなりません。

リアニメートは《生き埋め/Buried Alive》、《納墓/Entomb》という大魚の放流手段、《縫合/Stitch Together》という釣りざお、そして必要に応じてそれらに変換可能の《燃え立つ願い/Burning Wish》を失います。
ついでに各種の共鳴者を失うので手札から好きに墓地に埋める手段もなくなります。
黒単で埋める手段としては《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》が残っていますがそれだけではどう考えても遅い上に不足。
そうなると青で《ルーンの解読/Read the Runes》や《知識の渇望/Thirst for Knowledge》で引いて埋めるという方法でやっていく必要があるでしょう。
ただ、ピンポイントでクリーチャーを探してくるわけにいかないので現行のデッキよりもはるかに速度が落ちるのはしょうがないかと思われます。
釣りたい男筆頭の《幻影のニショーバ/Phantom Nishoba》も消えちゃったりします。

ゴブリンは問題なし。
ほとんどブロック限定構築みたいなものなので。
《蛮族のリング/Barbarian Ring》や《炎の稲妻/Firebolt》が消えるのは代用が利きそうですし、大量除去だった《激発/Violent Eruption》がなくなるのは惜しいところなんですがこれは撃たれるとゴブリンのほうが壊滅したりしてたので消えることにはそれなりのメリットがあったりもしますし。
火力で燃えない幻影シリーズやムダにデカいトークンが消えるのも嬉しいところです。

罠橋バーンは《激発/Violent Eruption》、《癇しゃく/Fiery Temper》などのマッドネス火力の脱落もさることながら《パッチワーク・ノーム/Patchwork Gnomes》のスタンダード落ちにより任意に手札を捨てる手段が足りなくなるのがキビシイかと。
《生体融合帽/Grafted Skullcap》も無くなって久しいので常に手札を0に保つ手段が赤単では用意できません。
とはいえアタック後にパワーが変動する悪の総本山《野生の雑種犬/Wild Mongrel》が消えるので、無理して手札を空にする必要は無いのかも知れません。
とりあえず刻印するカードを多用すれば、使う以上に手札を減らすことは可能なのでやっていけんこともないかと。

赤白土地破壊はそれほどメジャーなデッキタイプではなかったものの、緑赤土地破壊同様アンチコントロールデッキとして存在してきました。
ここからは《壊滅的な夢/Devastating Dreams》と《地の裂け目/Earth Rift》が惜しまれる人々。
1枚で複数土地が壊せるカードは全破壊呪文だけになってしまうので、せっかく広げた土地の差が活かしにくくなってしまいます。
そしてウィニー勢力を伸ばすようだと「間に合わない」可能性が出てきます。
それだけ見てると逆風なんですが、追い風の要素も無いことはなく。
まず、問題のウィニーは《野生の雑種犬/Wild Mongrel》や《獣群の呼び声/Call of the Herd》が消えることでクリーチャーが多少小型化。
lもちろん《ゴブリンのそり乗り/Goblin Sledder》や《栄光の頌歌/Glorious Anthem》といったタフネス増強カードも存在しているので一概には言えませんが、少なくともただ出てきてまず死なない《野生の雑種犬/Wild Mongrel》のような絶望感は無いかと。
あとは遅いデッキでカウンターを見かけることが減りそうなのも追い風。
そう考えると土地破壊も悪くはなさそう。

次はステロイドなんですがコレが微妙。
緑で《野生の雑種犬/Wild Mongrel》の脱落が惜しまれるのはまあ当然として、その他のカードはほとんど代用が利きそうなのにも関わらず魅力が薄そうな気が。
《幻影のケンタウロス/Phantom Centaur》や《獣群の呼び声/Call of the Herd》は《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》や《トロールの苦行者/Troll Ascetic》で埋めきれンこともないと思われますが、押していくというよりも守るほうに便利そうなカードなんでその辺が影響しているのかも。
あとは純粋なスピードでもっと早そうな単色デッキが見えてきてるのも悪印象なのかも知れません。
それらを考慮しても決して悪いデッキでは無いハズなんですが。
8版への変更で《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》と《カープルーザンの森/Karplusan Forest》が消えたところに《モスファイアの谷/Mossfire Valley(OD)》も消えてマナ基盤が厳しそうなのもこの印象を後押ししちゃってます。
とはいえ、速いデッキが尖がりきった時それを抑えるアクティブなデッキとして復権してくる可能性は充分に。

最後はGWビートダウン。
コチラも《サングラスの大草原/Sungrass Prairie》が消えることでマナが少々厳しくなり、あとは緑の優秀生物軍団をまとめて失い、《藪跳ねアヌーリッド/Anurid Brushhopper》も消えることでデッキの基盤のほとんどを失います。
他の緑がらみのデッキよりも緑のクリーチャー基盤に依存していたので、一番被害も大きいという事になりそうです。
新しいカードで置き換えて組むことも可能っぽいですが、ワザワザ2色にするメリットがあまり見えないのも事実。
何者かの陰謀により白ウィニーを推奨するカード群が多数挙がってきている昨今、事故の心配をしなくて済むよう単色で組んだほうがメリットが大きそうなのもまた事実です。

取りこぼしもあるかと思いますが、だいたいこんな感じで。
OD〜ONのスタンダードの初期から環境でのさばり続けたデッキは軒並み基盤を失い完全に消滅、ってことになりそうですね。
逆にオンスロートから来たデッキは鬱陶しいカードが消えてくれることで追い風。
スタートはブロック構築でも蔓延ったサイクリングとゴブリンからスタートするでしょう。
そこに8版とミラディンで戦力が追加された白ウィニーなどが絡んでくるでしょう。
そうなるとクリーチャーデッキを得意とするサイクリングにとっては嬉しい状況です。
《金属モックス/Chrome Mox》や装備品でクリーチャーデッキが軒並みスピードを上げて来るのが予想されるので楽勝と言い切ることはできませんが、カウンターや手札破壊の弱体化もいい話。
で、サイクリングが蔓延るとそれを止めにやってくるのがカウンター主体のデッキ。
サイクリングはキーカードが割れてる上にカウンターすべきカードはそう多くありません。
ただ貧弱になったカウンターでどれくらい止めきれるかは現段階ではいまいち見えてきませんね。

構築環境全体を見渡してみるとクリーチャーの小型化が目立ちます。
マッドネスやらフラッシュバックやらインチキ臭いコストで簡単にデカブツが出せたのがおかしかったんですが、ミラディンではある意味で適正値に戻ってきてます。
殴れるクリーチャーはタフネスが2。
緑の超優秀クリーチャー《トロールの苦行者/Troll Ascetic》でも3/2なのがいい例です。
これまで《野生の雑種犬/Wild Mongrel》等のせいで日陰者だった《紅蓮地獄/Pyroclasm》や《蔓延/Infest》といった軽めでチビッコ専用大量除去にも日の目が。
もちろん装備品なり《栄光の頌歌/Glorious Anthem》なり対策されるはずなので「絶対」効くワケではないでしょうが少なくとも有用性は増すはずです。
ここで気になるのが装備品の存在。
大量除去を喰らっても再利用可能なクリーチャーパンプ手段はウィニー系のデッキを加速してくれるでしょう。
多少除去しやすくなりそうとはいえ、簡単に押さえ込めるようになるということにはならなそうです。

あと大きな変化として「土地」。
まずは友好色のフィルターランドが消えることでデッキの多色化が多少厳しくなりそうです。
友好色でも使えるのはフェッチランドだけ。
コレに加えて《真鍮の都/City of Brass》、《大闘技場/Grand Coliseum》、《空僻地/Glimmervoid》の3枚が実用的な多色マナ供給元という事になるかと思われます。
《空僻地/Glimmervoid》以外はどれも代償にライフを要求するので中速〜低速の多色化デッキは土地だけで何点か持っていかれることになります。
高速の単色デッキと相対することを考えるとこれはちょっと無視できません。
フィルターランドはライフが削れないだけでなく、3色目を散らすことを容易にしてくれていたのでこの欠如は多色デッキにとって大きな損失です。

さらに枚数の問題も出てきます。
デッキ構築の根本として「一体デッキに何枚の土地を入れればよいのか」という問題がありますが、オデッセイブロックのカードはココをそれほどシビアに考えなくてもよいというご利益をもたらしてくれていました。
たとえば《蛮族のリング/Barbarian Ring》。
赤単など高速で動くデッキにとって後半余った土地を引き続けて失速してしまうのはなんとしても避けたいところですが、《蛮族のリング/Barbarian Ring》なら火力として投げてしまえば良いわけで、これは序盤の事故は避けたいものの後半土地を引き過ぎたくはないという贅沢な要求を何点かのライフを代償に解決してくれます。

さらにそんな特殊な土地を使わなくともいらない土地は共鳴者で捨ててしまうことで何らかの役に立てることができるため、速いデッキでも土地に余裕を持ってデッキを構築することを正当化してくれていたワケです。
わかりやすい例が《野生の雑種犬/Wild Mongrel》。
どんなに土地を引きすぎても《野生の雑種犬/Wild Mongrel》に突っ込んでしまえばダメージに変えることができます。

オンスロートブロックやミラディンにもマナ元として以外に使い道のある土地は存在しますが、これらとオデッセイブロックの土地との最大の差は色マナが出るか出ないかという点。
《ゴブリンの穴ぐら/Goblin Burrows》や《隠れ石/Stalking Stones》は後半ダメージを増やす装置として動いてくれますがどちらも色マナが出せないので多色デッキにはあまり入れたくないところ。
単色でも色拘束がキツいデッキでは投入がためらわれます。
さらにオンスロートブロックの土地は特定種族にしかご利益が無いので同じ白ウィニーでも兵士ウィニーなら活用可能、ただ単に白ウィニーだとあまりご利益が無いなんてことも。
サイクリングつきの土地で後半はドローに変えてしまうという手もありますが、速いデッキならばタップインの土地はあまり歓迎できません。

この先は今までよりもデッキの必要とするマナをキッチリと考えて土地の枚数と構成を考えなる必要がありそうです。

マナ元といえば、今回大量のマナアーティファクトが追加されているのも要チェック。
色を問わずマナブーストできるようになったので、スカージなどの重いカードも使えるようになる可能性は充分。
しかし元々速いデッキも同じようにブーストできるようになるので間に合うのかどうかは微妙なところですが。


思いつくところではこんなところですかねえ。
実際に大会などのデータが上がってくればもう少し考える材料もあろうってもんですが。
確証もないまま書きなぐってしまいましたが…2割くらいは当たるといいなあ。
こんな思いつきの企画かつ思考垂れ流しの駄文に御付き合い下さりありがとうございました。

次はもうちょいしてから、実際に大会とかの結果を踏まえて何か考えてみたいと思います。
ではでは。