HAMA研的初心者向けブードラ講座(6) |
いやあ、遅れた遅れた。 前回に引き続き、ドラフトでのデッキとはどんなものか?という話です。。 |
さてさて、ここまではドラフトにおいてどんなカードが強いのか、何が何枚必要なのかといった基準を見てきました。 いわばこれらは良い選手の見分け方。 野球なら9人、サッカーなら11人集めればとりあえずチームを作って試合をすることはできますが、そのチームが強いかというと・・・それはまた別の話。 選手をスカウトしに走る前に、どういうチームを作るつもりなのか運営方針を決めておかないと4番打者を9人スカウトしてくるなんて離れ業をやってのけてしまうやも。 そこで今回はその辺の話を。 ●ドラフトデッキの強さ さて、ドラフトで強いデッキとは大雑把に分けて「カード単体の強さで戦う」デッキと「デッキ全体の総合力で戦う」デッキの2つに分類できます。 選手個人のスキルに頼るか、全員野球で戦うかの差ですね。 単体の強さで戦うプランは比較的わかりやすいかと。 ぶっちゃけてしまえば質の高いカードをピックして、それらをマナカーブと攻守のバランスを考えて最適に配置する。 これだけ。 言ってしまうのは簡単ですが、これだけのことを適正に実行するのが難しかったりしますけど・・・。 レアとかアンコとかでパワーカードに恵まれると勝手にこういうドラフトになったりします。 このプランの特徴はそのわかりやすさと汎用性。 デッキの組み方としては王道中の王道ですから、新しいエキスパンションで初めてドラフトする際も有効。 そしてデッキの動かし方も直線的でわかりやすい。 しかし素材の味をそのまま活かす料理にも似て食材のランクが低いと料理そのものがマズくなるのと同様、取れたカードの質がダイレクトにデッキの強さを左右します。 逆に「デッキ全体の総合力で戦う」デッキはそれほどでもない素材を一手間かけてこった料理に仕上げるのに似て、ちょっと知識や技術が必要です。 食材には相性のいい組み合わせってヤツが存在してますよね? カモにネギ、ドジョウとゴボウ、ナスと油。 一つ一つはありふれた食材でありながら、組み合わせると下手な高級食材も裸足で逃げ出す旨さになったりする庶民の味方。 カードにもそういう組み合わせが存在していて、それらを軸に組まれるデッキ、展開されるドラフトってのはカードパワーで押し切るだけのデッキに負けない切れ味を持つモノが少なくないです。 たとえば《地の底のシャンブラー》。 4マナ2/3という標準以下のサイズのボディーにエコーというデメリ、そして場に出たときと離れたときに《微震》というオマケがついています。 本来の《微震》のコストは1マナ。コイツのエコーは4マナなのでオマケ分のお代としてはちょっと高め。 同じシリーズの《大火口のカヴー》と比較するとすべてが貧弱で明らかに見劣りしますが、そこにはコモンとアンコモン間の越えられない壁が存在します。 しかしここに相方として《トレイリアの歩哨》を付けてみます。 これで任意のタイミングで《シャンブラー》を出したり戻したりする事ができるようになり、《紅蓮地獄》をバイバックできるようにしたかのような制圧力に。 これは神クラスのアンコモン《紅蓮炎血》にもおさおさ見劣りしない大量除去兵器です。 そのくせ《シャンブラー》も《歩哨》もコモン、パックから入手できる可能性は断然上。 狙ってみるのも一つの手。 コレが「デッキ全体の総合力で戦う」ドラフトの基本的な狙いです。 相性のいいカードを複数、連鎖的に組み合わせていくことでギミック満載のデッキをドラフトすることで単純にカードパワーの強いデッキに対抗することも充分に可能です。 さて、ここまで書いておいてなんですが「カード単体の強さで戦う」ドラフトと「デッキ全体の総合力で戦う」ドラフトは相反するものではなく、実は両立させることが可能です。 「開封したパック全てから4番打者しか出ない」なんていう展開はまずあり得ない以上、当然デッキの中には穴埋め要員が含まれることなります。 ならその穴埋め要員を「相性のいい組み合わせ」で固めることで隙のないデッキをドラフトできるという次第。 それらをある程度踏まえていった先に「デッキのアーキタイプ」なるものが出てきます。 ●「デッキのアーキタイプ」とは? いきなり「デッキのアーキタイプ」なんて言われてもなんのこっちゃわかりゃしませんよね? 極端に言い切ってしまえば「デッキの理想形」です。 たとえば「9版、ラヴニカブロック、時のらせんブロックのスタンダードで組まれるボロスデッキウィンズを想像してください」と言われたらなんとなくデッキの内容が想像できませんか?。 1マナ圏に《サバンナ・ライオン》と《アイケイシアの投槍兵》入って、2マナ圏に《サルタリーの僧侶》と《聖なる後光の騎士》、火力は《稲妻のらせん》が〜というように。 人によっては「いやいや《硫黄の精霊》出されて壊滅するのはイヤだから、タフネス1は《サバンナ・ライオン》しか入らないよ」とか「《炎の印章》よりは《ショック》の方が奇襲性が高くていい」とかいろんな意見があって、細かくカードが入れ替わるでしょう。 そういう意味では誰もが全く同じデッキを想像するっことはないでしょうが、大体似たようなデッキを想像しますよね? なぜでしょ? 理由は「ボロスデッキウィンズ」とは「白と赤の2色で効率のいいクリーチャーと火力を組み合わせた速攻デッキ」という共通認識ができているからです。 そしてこの共通認識に従ってデッキを組むとカードの選択肢は意外に狭いので、最適化していくと申し合わせたわけでもないのに似たり寄ったりなデッキが出来上がります。 与えられたカードプール(この場合9版、ラヴニカブロック、時のらせんブロック)でデッキプラン(この場合白赤の速攻)に基づいて理想形を模索していくとデッキの形はある程度絞られてしまうものです。 言ってみればこれがボロスデッキウィンズという「デッキのアーキタイプ」に相当します。 そしてコレはリミテッドでも同じことです。っていうかむしろ構築よりも厳しいくらい。 構築の場合自分のカード資産の許す範囲で好きなカードを4枚まで入れることができますが、ドラフトでは自分がピックしたカードしかデッキに入りませんし、その中で質の高いカードというのは数が限られます。 そういうなかで「その色で単体で強いカード」と「その色の組み合わせで相性のいいカード群」というのを加味していくと、「ラヴニカ×3の青黒なら強いのはこんな形」とか「時のらせん、次元の混乱、未来予知の強い白青はこんな形」というような理想的なデッキの形が浮き上がってきます。 コレがリミテッドにおける「デッキのアーキタイプ」になります。 この「アーキタイプ」そのもの理想形をドラフトしようとしても、パックから出ないカードは入れられないので完璧な理想の形にすることはできません。 でもなるべく近い形にドラフトできればそのデッキはより強いものになりますし、逆に離れれば離れるほどデッキは弱いものになります。 「コレが理想形だ」というリストをズバッと提示することができれば話が早いんですが、それはできないのが面倒なところです。 構築でも「コレが理想のボロス」みたいのを提示するのは難しいですが、ある程度はできますよね?どこそこのグランプリで優勝したこの形は翌週のプロツアーでも優勝した・・・とか。 しかしリミテッドは毎回状況が変わるため「コレが理想形」と出してくるのがハッキリ言って無理。 でも間違いなく存在します。 これは自分で何度もドラフト繰り返して勝った時のデッキを覚えておいたり、誰かリミテッドが強い人に強いアーキタイプを聞いてみたり、リミテッドのプロツアーの上位デッキを見るなりして情報収集してイメージを掴んでください。 一応、手がかりとして言えることが一つ。 拡張エキスパンションなんかだと特に強い傾向ですが、パックの中にはなんらかのテーマが含まれています。 マッドネスだとか親和だとかスピリットクラフトだとか氷雪だとか色々ありますよね?そのセットのテーマになってるメカニズムが。 こういった「セットのテーマ」を軸にドラフトすると強いデッキになりやすいという傾向があるので、ドラフトに使用するパックでの「デッキのアーキタイプ」探しの手がかりとしてみてください。 さて、今回まででドラフトにおけるデッキの話は終わり。 次回はこれまで見てきたことを踏まえた上で、実際にカードを取るというトコに進みたいと思います。 |