HAMAエンジン2号
1.天才のひらめき
ある晴れた日の真っ昼間とあるラーメン屋で対面に座る所長の面白くもない顔を眺めつつ
カニチャーハンを口の中に放り込む作業に徹していた時のことである。
突然「一瞬でライブラリを削りきるコンボを発見したのじゃよ。」と歪んだ笑みを浮かべつつ所長がのたまう。
今でこそ医学部合格と言う偉業を成し遂げられ立派に学生になられた所長も当時は浪人疲れが顔にでる立派なプータローであった。よってその笑顔もかなり食欲を削ぐ程度にはひどいものである。ただでさえまずい料理を食べきることを断念して「どうやんの」と一応聞いてみる。
「まずドルイドの誓い(EX)をおく。」
「ほう」
「で、相手の場にクリーチャーが出てたとして、次の自分のターンに誓いを起動する。」
「それで?」
「ところが自分のデッキにはクリーチャーが入っとらんのだよ。(ニヤリ)」
「最近暑いから気を付けろよ。」
「これを元にデッキを組んでみたい所存である。」

2.大慌ての捜索
所長がおっしゃる以上しかたないのでとりあえず考えてみることにする。
しかし考えればどうにかなるというものでもない。なにしろこのコンボが回った後に残るものは突然ライブラリアウトした男を怪訝そうに伺う対戦相手の顔だけである。
一人で勝手に燃え尽きて力石をきどるわけにもいくまい。
「所長殿、無理であります。それに何も回っていないのでは我々の研究コンセプトに反します。」
「ではガイアの祝福(WL)を投入する。これでどうだ?」
「確かに回るけどさ、また回るだけですか。(苦笑)」
何だか乾いた笑いが宙に消えていく。
ちょっと涙が出てきたが負けるなオレ。
「ん、まてよ。ひょっとしていくら回してもクリーチャーが出ないと相手にジャッジ呼ばれて怒られるかも知れんな。」
神様助けてください。所長の精神がパプ○マス・シロ○コに連れて行かれそうです。
「主任、前言撤回。クリーチャー一体だけ入れよう。すぐ死ぬヤツ。」
あ、所長が意外な方向から帰ってきた。ありがとう神様。いや、ひょっとしてラ○ア?
「さてさて何を入れましょう?スパイクの飼育係(ST)?モグの狂信者(TE)?」
「いや、ファイレクシアのドレッドノート(MI)。」
「なるほど。ということはもちろん我々の魂のカード伏魔殿(EX)が入るんですね。」
というワケでこれがHAMAエンジン弐号の全貌である。
ドルイドの誓い(EX)+ファイレクシアのドレッドノート(MI)+伏魔殿(EX)+ガイアの祝福(WL)
少々枚数が多いがドルイドの誓いと伏魔殿さえ出しておけば後は勝手に出てくるので実際は二枚そろえばよし。あとは相手がクリーチャーを出してくれれば黙って座っていても2ターンで人が死ぬ。MAHAエンジン壱号にくらべて何という進歩であろうか。
「コンボ要素以外はカウンターとドロー操作とマナブーストだけ突っ込んどけば勝てるであろう。」との所長の無責任な発言受け私はこのデッキを制作し実戦に投入したのである。

3.実戦投入
そして十分なプレイの結果得られた結論
「強いぇえええええぃ!!」
そう、製作者の意図しないほどの勝ち星をあげたのである。しかし勝ち星の影でこっそり浮上した問題点があった。
伏魔殿を出した後、素でドレットノートを二発たたきこんで終わることがあまりにも多かったのである。
「所長、ドルイドの誓い不要説が所内の過半数を占めました。」
所員二名のうち一人が転べばそれで立派に過半数である。せきをしてもふたり(当時)
「何を言っとるのかね主任。あれを外せば単なる一発地雷デッキに成り下がってしまうではないかね。そもそも回さないとウチらしくないと言ったのは君じゃよ。」
所長のこの非常に説得力あふるる御意見により「誓い不要論」は歴史の闇に葬られることとなったのである。

4.後日談
それから少々の時間が流れ、我々の手には大規模な大会の上位デッキのリストがあった。
そしてそこには堂々と「パンドレット」「カウンターオース」の名が華々しい成績と共に掲載されているではないか。
我々と同じカードを使用しながらこうも洗練されたデッキ、いうなればビ○ザム、
エ○メス級の戦闘力を誇るデッキを構築なさった方々がおられたのである。
彼らの前ではHAMAエンジン弐号などゾ○クやザ○レロ程度、「卿らは本気でこれでいけると思ったのかね?」とギ○ン閣下直々にお叱りを受けても文句は言えまい。受けてみたい気はするが。
自分たちの方向性に対する深刻な疑問を両手いっぱいに抱え、自我が青い世界に沈み込んでいくのを感じつつぢっとリストを眺める。
「所長、我々ハコンナモンツクッテテヨイノデショウカネ。」
「いいんじゃないの!特に今回のやつなんか。上のほうのデッキにかなり近かったじゃない。この線で進めていこうよ、いやイケてるってマジで。」
本当に近かったのか?あさってのほうに射ち込んだ魚雷がたまたまヘリにぶち当たったぐらいの偶然なんじゃないのか?どんな偶然かしらんが。

その後我々はHAMAエンジン参号を開発してしまう。
イケてるという「この線」とやらに乗っかったまま。

結論「オレたちはザク○ロが大好きさ。」
ジ○ンが連邦に負けたのはきっと我々みたいな開発チームがたくさんあったせいだろう。
とくに水中戦モビルスーツ。
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